TOP > エンターテイメント > ディア・ドクター
ある日、ふいに診療所を出ていって以来、誰もその姿を目にしていない。村はずれの長い坂道で、脱ぎ捨てられた白衣が見つかった。あの先生がいなくなったら、村はどうなってしまうのか?集まってきた村人たちが心配そうに騒ぎ始める。
やがてベテランの刑事が二人、県警から派遣されてくる。どうせ辺鄙な土地に嫌気が差して逃げ出したんだろう。一人はそう疑っている。ともかく彼らは、消えた医師の身辺を洗ってみることにする。しかし、調べれば調べるほど、伊野という男の経歴からは不審な点ばかり浮かび上がってくる。出身地さえも曖昧な彼が過去に在籍した数々の病院にも、すべて出自を偽っていたようだ。彼がどんな人物だったのか、ちゃんと知っている村人は一人もいない。「神様、仏様より先生の方が頼り」などと言いながら、誰ひとり彼の心の内の声に耳を傾けようとしなかったのでは─。刑事の胸にはそんな疑念が広がっていく。
やがてベテランの刑事が二人、県警から派遣されてくる。どうせ辺鄙な土地に嫌気が差して逃げ出したんだろう。一人はそう疑っている。ともかく彼らは、消えた医師の身辺を洗ってみることにする。しかし、調べれば調べるほど、伊野という男の経歴からは不審な点ばかり浮かび上がってくる。出身地さえも曖昧な彼が過去に在籍した数々の病院にも、すべて出自を偽っていたようだ。彼がどんな人物だったのか、ちゃんと知っている村人は一人もいない。「神様、仏様より先生の方が頼り」などと言いながら、誰ひとり彼の心の内の声に耳を傾けようとしなかったのでは─。刑事の胸にはそんな疑念が広がっていく。
遡ること2ヵ月前、研修医の相馬が赴任した。診察、薬の処方、独居老人の健康チェック。村の診療所に住みこんだ伊野は、すべてを一手に引き受けていた。「無医村だった村に、俺があの人を連れてきた」と自慢する村長。最初こそ戸惑っていた相馬だったが、村人から心底頼りにされている伊野と一緒に働くうち、次第に都会では味わったことのない充実感を覚え始める。
ある日、鳥飼かづ子という未亡人が倒れた。彼女は伊野に「なんにもしなくていいですから」と呟く。数年前、長い看病の末に夫を看取った彼女は、自分が娘たちに同じ負担をかけることを何より恐れていた。「先生、一緒に嘘、ついてくださいよ」というかづ子の頼みを、伊野は「病状を包み隠さず診させるならば」という条件のもとで引き受ける。しかしその時から伊野自身がひた隠しにしてきたある嘘も浮かび上がってくる。ずっと言えずにいた、一つの嘘が―。
6月27日より、シネカノン有楽町1丁目ほかにて全国ロードショー
ある日、鳥飼かづ子という未亡人が倒れた。彼女は伊野に「なんにもしなくていいですから」と呟く。数年前、長い看病の末に夫を看取った彼女は、自分が娘たちに同じ負担をかけることを何より恐れていた。「先生、一緒に嘘、ついてくださいよ」というかづ子の頼みを、伊野は「病状を包み隠さず診させるならば」という条件のもとで引き受ける。しかしその時から伊野自身がひた隠しにしてきたある嘘も浮かび上がってくる。ずっと言えずにいた、一つの嘘が―。
6月27日より、シネカノン有楽町1丁目ほかにて全国ロードショー